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カルヴァン
キリスト教綱要
礼拝説教 桜井良一牧師
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秘められた計画

(2010.01.03)

聖書箇所:エフェソの信徒への手紙3章1〜6節

1 こういうわけで、あなたがた異邦人のためにキリスト・イエスの囚人となっているわたしパウロは…
2 あなたがたのために神がわたしに恵みをお与えになった次第について、あなたがたは聞いたにちがいありません。
3 初めに手短に書いたように、秘められた計画が啓示によってわたしに知らされました。
4 あなたがたは、それを読めば、キリストによって実現されるこの計画を、わたしがどのように理解しているかが分かると思います。
5 この計画は、キリスト以前の時代には人の子らに知らされていませんでしたが、今や"霊"によって、キリストの聖なる使徒たちや預言者たちに啓示されました。
6 すなわち、異邦人が福音によってキリスト・イエスにおいて、約束されたものをわたしたちと一緒に受け継ぐ者、同じ体に属する者、同じ約束にあずかる者となるということです。

1.星に導かれた博士たち
(1)占星術の学者

 教会暦で今朝の礼拝には「公現日」と言う名前がつけられています。この公現日とは神がイエス・キリストを通してその救い計画をすべての民の上に現してくださったことを記念するために設けられています。そしてこの公現日には必ず、この礼拝でも最初に読んだマタイによる福音書に記された占星術の学者たちの話が朗読されます。実はこの占星術の学者については教会内でいろいろな伝承が伝わっています。その史実性はともかくとして、その中でも最も代表的な伝承は彼らがヨーロッパ人、アジア人、アフリカ人をそれぞれ代表する王たちであると言う話です。つまり、彼らの来訪こそが、神の救いがイエス・キリストを通してすべての民の元に届けられたことを現していると教会は考えて来たのです。
 しかし、聖書は彼らについて様々な解釈を提供する伝承とは異なり、きわめて簡潔に彼らについて「占星術の学者たちが東の方からエルサレムにやって来て」(マタイ2:1)とだけ告げています。古代世界において占星術の学者たちは大変重要な役目を果たしていたと考えられています。彼らは星の運行を調べることで、世界や国家の未来を予想し、王や国の指導者たちにアドバイスをしていたからです。ですから、彼らは私たちが通常「星占い師」と言う言葉で考えるような人と違って、相当な地位を持った人々であったと考えることができるのです。その彼らがわざわざ自分たちの母国を離れて長い旅に出発し、エルサレムにまでやって来たと言うのです。もしかしたら、彼らは自分たちが見つけ出した星が、世界を揺るがす大きな出来事を知らせるしるしと考え、その出来事を究明すべく慌てて旅に出たのかもしれません。彼らにとってはどんな犠牲を払っても究明しなくてはならない貴重な真理を、彼らが見つけた星は示していると考えたからです。

(2)神はすべのものを用いることができる

 ところがイスラエル以外の世界ではこのように大変に重要視された占星術の学者たちの仕事ですが、聖書の世界ではそうではありませんでした。実は聖書の世界では占い師や霊媒師と言った職業は厳しく禁じられていたのです。なぜなら、神を信じる人々にとって必要なものはその神様への信頼だけだからです。神様を信頼して生きるなら、わざわざ将来を占って、それが自分に益になるかどうかを判断する必要はないからです。しかし、不思議なことに聖書の世界では排除されているこのような占星術の学者の知恵が、ここでは用いられています。なぜなら彼らが頼りとした星が彼らを救い主イエス・キリストへと導いたからです。
 これは神様が私たちを救い主イエス・キリストに導くために、様々な方法を用いてくださることを表しています。この世から否定されたり、役に立たないと評価される私たちの人生の経験や知識も神様は用いてくださり、私たちをイエス・キリストへと導いてくださるのです。ある人は自分の人生に起こった大きな失敗とそこから生まれた絶望を通してイエス・キリストへと導かれることがあります。またある人は深刻な病気や、様々な問題を通してイエス・キリストに導かれることがあるのです。それは私たちにとってはあたかも偶然の産物のように思えるかもしれません。しかし実はその出来事は神様のすばらしい救いの計画に従って私たちの人生の上に現われたことなのです。占星術の学者たちの物語はこの神様の計画のすばらしさを私たちに教える物語の一つだと言えるのです。

2.神の秘められた計画
(1)神の計画を信じた囚人パウロ

 占星術の学者たちだけではなく、神様は私たち一人一人の人生のためにすばらしい計画を持っています。そして私たちをご自身が実現しようとしてくださっている全世界に対する救いの計画の中で用いてくださるのです。そのことを強く力説しているのが、今日の礼拝でマタイによる福音書とともに朗読されたエフェソの信徒への手紙です。この手紙は使徒パウロによって記された手紙と考えられています。この手紙には私たちがこのように教会に集い、神を礼拝することができるのは、何かの偶然が生み出したものではなく、神様が天地万物を創造する以前から、立てられていた神様の計画に基づくものであると教えられているのです。
 そしてこのすばらしい神様の計画を信じるパウロは、自分の人生に起こる出来事、また世界に起こる出来事のすべてをこの神様の計画から解釈することを心がけ、そしてそこから慰めと励ましを豊かにいただいた人物だったのです。パウロは次のように語ります。

 「こういうわけで、あなたがた異邦人のためにキリスト・イエスの囚人となっているわたしパウロは…」(1節)。

 この手紙を書いたときにパウロはローマの囚人となっていました。彼が囚われ人になっていると言う事実は、本来決して彼にとって好都合なことではありませんでした。特にパウロを攻撃した人々は彼の投獄を、彼を攻撃するための材料とすることができたからです。「どうしてパウロは自分のことを使徒と称しながら、ローマの囚人となり下がっているのか。彼の人生にそんなことが起こったのは、彼が本当の使徒ではない証拠である。さらに彼は神様から見放された存在だからこそ、そのような不幸な目に遭っているのだ」。反対者たちはそのように囚人となっていたパウロを攻撃できたからです。
 しかし、パウロは自分が囚人となったことは神の救いの計画に基づくものだと考えました。彼はその神様の計画に信頼して、彼に与えられた限られた環境を十分に利用し、福音を宣べ伝える使命を遂行したのです。そして彼はエフェソの教会の人々に手紙を書き送ったのです。私たちは自分に与えられた環境がよくないと考え、だから自分は十分な働きができないと考えてしまうことがあります。しかし、事実はそうではないようです。
 インドで貧しい人々のために一生を捧げたマザー・テレサは多くの人々に「あなたにできることをしなさい。神様は私たちにできることしか望んでおられない」と教えたと言います。そして彼女のこのシンプルな考え方が、世界の人々の心を動かす活動を生み出したのです。彼女がそのように語ることができたのはどうしてでしょうか。彼女がパウロと同じように神様の計画を信じていたからではないでしょうか。なぜなら神様はそのすばらしい計画に基づいて、私たちをそれぞれの場所に置き、そこで私たちに自分にできることをするようにと望んでおられるからです

(2)異邦人を救う神の計画

 ところでパウロはこの箇所で何を語っているのでしょうか。それは彼が熱心に福音を宣べ伝えた対象である「異邦人」についての神様の計画についてです。なぜなら、旧約聖書を読むとわかるように、そこに登場する人々のほとんどは神様の「約束の民」と呼ばれるイスラエルの人々に限定されているからです。そしてそこではイスラエルの人々以外の外国人、つまり「異邦人」と呼ばれる人々はむしろ神様の救いからは除外されているように取り扱われているように思えるからです。
 パウロはこの神様の計画に反して異邦人に福音を伝えたのでしょうか。そして偶然にも異邦人が神様の福音を信じることが起こったために、それ以後のキリスト教会の歴史は変わっていったのでしょうか。そうではありません。パウロはここで「秘められた計画」と言う言葉を持ってそのことを説明しようとしています。異邦人の救いは神様の計画の中に天地の造られる前から決められていたものなのです。そしてその計画は旧約時代には隠されていたのです。つまり「秘められていた」のです。そして、その計画はイエス・キリストがこの地上に来られることによって、明らかなものとなったのです。だから、パウロはその明らかになった計画に従って、福音を異邦人たちに伝え続けたのです。
 それでは神様は異邦人に福音が伝えられることを通して、何を実現しようとしているのでしょうか。パウロはそのことについて次のように教えます。

 「すなわち、異邦人が福音によってキリスト・イエスにおいて、約束されたものをわたしたちと一緒に受け継ぐ者、同じ体に属する者、同じ約束にあずかる者となるということです」(6節)。

 神様はイスラエルの民に約束してくださった祝福のすべてを異邦人が一緒に受け継ぐことを願っているのです。ですから、旧約聖書では私たち「異邦人」は無視されているから、旧約聖書の内容は私たちには関係ないと言うことはできないのです。なぜならイスラエルの民に約束されたものすべてを私たち「異邦人」も受け継ぐことになっているからです。そして、パウロが言うように私たちはみな「同じ体に属する者、同じ約束にあずかる者」となるのです。この同じ体とは、キリストの体と呼ばれる私たちの教会のことを言っています。ですから、私たちが今、この教会の一員とされていることで、神様の計画に基づく祝福の相続人とされているのです。

3.明らかになった計画

 このようにパウロは神様の秘められた救いの計画がイエス・キリストの福音を持って今、私たちに明らかになったと語ります。そしてパウロは自らの人生もその神様の救いの計画の中で豊かに用いられていることを信じ、歩んだのです。ですから彼が使徒として誰よりも豊かに働くことができた最大の原因は、彼がその神様の計画を信じて、疑うことがなかったからだと言えるのです。
 また、占星術の学者たちは星に導かれて幼子のもとを訪れ、神様の秘められた救いの計画がイエス・キリストを通して実現しようとしていることを知りました。おそらく彼らは、そのために未来を占うことでなく、神様の計画を信頼して生きる者に変えられたはずです。彼らが幼子に捧げた「黄金、乳香、没薬」は彼らが大切に使っていた占いの道具と考えるなら、彼らは幼子イエスに出会うことによって「占い」の生活から解放されたと考えることができるからです。
 ですから私たちが未来に対して持っている漠然とした不安から解放されたいと願うなら、私たちもこの幼子を通して明らかとなった神様の救いの計画を信じることが必要なのです。また、私たちがたとえどのようなところに置かれ、またどのような状況に立たされたとしても、そこで自分の力を十分発揮して生きることができるためにも、私たちはこの神様の計画を信じる必要があるのです。なぜなら、私たちの人生に起こることはすべてには偶然と言うものはなく、神様の計画が導いており、私たちはその神様の計画の中で用いられることができるからです。

【祈祷】
天の父なる神様
 今年も新しい年を始めることができたことを感謝します。私たちが神様の救いの計画を信じることで、今年も新たな希望を持って生きることができるようにしてください。困難や試練の場所で、あなたに信頼して、生きることができるようにしてください。
主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。
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